top of page
驟雨

シナリオ『怪談會-kwaidankwai-』公開によせて

更新日:2020年5月23日



まずは正式リリースにあたって、テストプレイヤーをつとめてくださった爪子さん、蒼烏さん、akaneさんに心から御礼申し上げます。卓仲間が数えるほどしかいないんです…。


謝辞も済ませたところで「怪談會-kwaidankwai-」について隙あらばなんとやらの走り書きをば。白文字反転でネタバレがありますので、未プレイの方でダークモードやブラウザのテキスト表示など使っておられる方はご注意ください。





 

◆難易度について

 おそらく、現時点の拙作内では一番攻略が簡単なシナリオ。

 そもそも拙宅のシナリオ、攻略難易度は高くないと思っているのですが、事件・事象の因果関係や作中人物の行動動機などががっちり噛み合って成立している話が好きなので(うまくいってるかどうかは別ですが…)情報量が多く、読み込みの手間やらでマスタリングの負荷が高い傾向にあります。

 卓ゲそのものが、GMがいないと成り立たないのにコストがPLよりかなり高いのもあって、GMの負荷が特に重いシナリオって遊びにくいよなぁ…ということで、今回はGMが楽なものを、というつもりで作りました。

 …と取り繕ってみましたが、本音は「宿で深夜&酔っぱらった脳みそでも回せて、PLにはそこそこ怖がってもらえるホラーシナリオほしいな~~~♡」です。だいなし。

 あとは、大正時代ものは知識面の不安からハードルが高いというのも実感としてあったので、このテーマなら気軽に大正モノっぽい雰囲気が出るかなと…。

 そのかわり行動選択やエンディングの自由度が低い、いわゆる一本道ですね。


◆タイトルについて

 漢字表記を「怪談"會"」にしたのは、タイトルを汎用的な単語にしてしまうと、パッと見シナリオなのかマジモンの怪談会の話なのかわからなくなってしまうためですが、後ろの-kwaidankwai-は完ッッッ全に趣味です。小泉八雲の「怪談」がそうですが、ひらがな表記にすると「くゎいだん」になるのがなぜか異常に好きでして。調べてみると「会/會」も「くゎい」だった(ネタバレ:なお、タイトルの仕込みである「階段回」も、ちゃんとkwaidankwaiなんですよ…)ので喜び勇み、わざわざ長ったらしいローマ字表記をつけることにしましたとさ。

 ちなみにkwaiの表記のエピソードで忘れられないのが、うすはりグラスで有名な松徳硝子さんの限定酒器「本所七不思議 怪談ぐい呑み」の公式製品ページのURLがkwaidan表記だったことです。さりげないこだわり最高です。しかしURLの単語見て悦ってる奴はかなり気持ち悪いですね。なお自分の手持ちぐい呑みはこのシリーズの「消えずの行灯」です。



◆モチーフについて

 まず、字書きとしてのわたしの宗派は泉鏡花です(唐突な信仰告白)。というわけで、彼が怪談会で語った小話やら、怪談会の様子を書いた新聞記事やらに触れる機会がちょこちょこあり、その雰囲気にとても惹かれるものがありました。真夜中に同志がふらふら集まって、座敷で卓につき、あるいは座蒲団におさまり、酒飲んでみんなで怪談を披露しあって肝試ししてはしゃぐとか、パリピっぽいイベントなのに徹頭徹尾内容が陰に籠ってるの最高じゃないですか?

 鏡花センセの参戦エピソードについてはそれ自体が怪談じみてる(※参加者から死人が出た画博堂の件とか)こともあって怪談会そのものに対する印象が強く、しかもどうやら百物語からの肝試しルートが定番らしくて、こりゃホラーもののTRPGで舞台にするとめちゃくちゃハマりそうだなと。「テーブルトーク」ゆえに百物語はPLが主体的に参加できるし、自らこわい話をしてこわいものを見にいくわけで、卓ゲの臨場感と相性ばっちり。

 思えば、日常のシーン(よくあるのは仕事とか旅行とか友人の頼み事とか)からホラー演出しやすい状況(深夜、単独行動、光源の制限、密室…)へ、説得力を持たせつつPL/PCを連れ込むの、案外苦労するんですよね。そりゃ自然な人の心理として、不穏で怖い場所・対象の探索なら明るいときに行こうぜって思うわけで。タイムリミットや発動ギミックで追い込み漁するのが定番ですが、肝試しならむしろ、怖い時間帯に、怖い場所に、事前に恐怖感を自ら盛り上げて満を持してダイブするのが当然なわけで、もはや入れ食い状態ですよ奥さん。誰だよ奥さん。

 ということで、他人のまわしで相撲取ってますが、舞台設定はとてもお気に入りです。


◆エンディングについて/NPCについて【ネタバレのため反転】

 A,Bエンドのオチは、怪談話としては「定石」なものの、あれを自分で経験することはほぼないと思うんですよね。せっかくなので最後は自分が怪談の主役になれるエンディングってのもオツだなと。

 とはいえ、あれをやるにしては全体的に設定が緩めになってしまい、何かこう、納得できない・スッキリしないかもな…と思いつつリリースしてしまった。近野にしっかり自覚があったら探索者に対して白を切りまくることになり、そうなると探索者を自分の期待通りに行動させようとする「黒幕」ポジションになってしまうのがどうも違う…と首をひねったんですが(個人的に、幽霊ってのは自我の不安定さや、自分の望みに対しての自覚や客観が薄いとこが儚くて味わいがあるなと思ってます)、それを回避するとどうも彼の動機や行動指針がぼける。探索が進むにつれて彼の意思・記憶が影響を受けて変化するとか、そんな感じで背景を練るべきかも。

 ところで北村は珍しく、自分で描いた立ち絵が気に入ってます。いっそPCにコンバートしたい気もするけど、即興でああいうRPは自分にはムリ。でも台詞例準備してるときはアホほど楽しかったです。たぶんノリノリなのがバレバレだと思います。



いやあ、今作は(も)自分の趣味フルスロットルで楽しかったです。

そして、楽しんでいただけると嬉しいです。



あ。オンセのBGMに「妖~ayakashi~」と「モノノ怪」と「蟲師」のサントラをお勧めしておきます。あまりにもひねりがないですが、舞台ともシナリオとも親和性がある…と信じてる…。

bottom of page