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シナリオ構造を考える(動機と期待について)

  • 執筆者の写真: 驟雨
    驟雨
  • 2019年12月12日
  • 読了時間: 7分


自分がシナリオ書いた後テストプレイしてもらって改善していくときとか、PL/PCとして動いた経験から考えた結果、こうかな?というのがちょっとまとまったのでメモ。

よく言われるのは「動機」、これはシナリオライティング初心者の自分でも身に染みて感じますね、うん。


不正のトライアングル理論とかでいわれる、「動機にはインセンティブ型とプレッシャー型の2種ある」ってのはこの場合にも当てはまる。探索者は、序盤はインセンティブ型の展開もあるけど、システムがホラーである関係上、おそらくプレッシャー型の動機の方が扱いやすい。なんせ探索者には、不安や恐怖という「反・動機(動機からくる行動に対して障壁となるもの)」が多いので…諦めてもダメージの少ないインセンティブ型では「じゃあやめよう」となってしまいかねないので、強いプレッシャー(生存本能だけじゃなく、倫理や正義、他者への情なんかもインセンティブというよりプレッシャー側だと思う)に追い立てられながら、いやだ・怖い「けれど」進まなければ「ならない」、と感じる状況に持っていくのが行動しやすいんだろうなと。


そして、動機とは違う側面で、行動の火力になってくれるのは「期待」だと思うんですよね。

詳しくいうなら「その行動によって事態が好転するだろうという期待感、のぞみ、手ごたえ」とでもいうべきもの。これを感じさせるのは、日常から非日常へ転がり落ちる運命を背負う探索者にとってはかなり難しい。

ちなみに私は「歴戦の継続探索者」は「新規探索者」とは別の生き物だと思ってます。歴戦の探索者は、すでに荒唐無稽でファンタジックでオカルティックな事象が彼らの現実になってしまっている(たとえば呪文が効力を持っていることを、あるいはこの世界には怪物じみたなにかがいることを、自身の心身で知っている)。だからこそ、一般人ならまずしないであろう事象を想定して警戒したり、逆に一般人なら絶対に信じないだろうことを信じたりする。「期待」という言葉を使うなら、歴戦の探索者はこういうオカルティックな行為でマジで何かが起きることがある、とすでに知っているので、期待の持ち方も、行動に移すときの期待感の高さも、もはや一般人のそれでは全くないんですな。

それに比べると、あくまで一般人である新規探索者がオカルティックなものに対して抱く「期待」は本当に低い。古書に載っている呪文、手記に出てくるバケモノの話、背後や窓にちらつく異形の影、そういうものに対して食いつく(あるいは警戒する)理由がない。つまり「ファンタジーやメルヘンじゃあないんですから」ってやつ。


プレイ中に「PLとしてはともかくPCが戸惑っている、動かしにくい」状態に陥るときの原因が「動機」である、という状態は最もよく遭遇するし、わかりやすい。たとえば、ゲーム的にはどこかに行かないと話が始まらないけれど、そこに行くことに意味を見出せない、行かなくても別に困らない。PCが置かれている状況において、そこに行くのは"自然な行動"ではない、というもの。あるいは、「反・動機」が「動機」に勝ってしまうというのもある。行くことのリスクが高すぎる、行かない方がマシだと感じてしまう。……んだけど、これ実は「期待」の強弱という要素もあるんじゃなかろうか。つまり、「反・動機」の風圧に抵抗するためには、「動機」の火力だけではなく「期待」の火力もかかわってる。ピンチだ、何かしなければ、でも何をしていいのかわからない。ヒントっぽいものは手に入れたけど…という場合、「期待」の火力を強める要素を足すといいのかも。「この荒唐無稽にみえる情報が実は真実なのでは」「この行動をすると、ありえないはずの何かが起きるのでは」と感じる情報を配置することで、まだマトモな感覚の、常識の世界に生きている探索者の行動をプッシュできる…んじゃないかな、と。


『ヰ書』はこの「期待」の要素が悩みどころだった。PCとして「動機」は十分に強く感じてもらっていて、ヒントとなる情報もほぼ拾ってるのにPLが長時間悩む、それが「期待」(のぞみ、可能性、手ごたえ)が弱かったんだな、というのが後で聞いてわかったり。

とはいえ、自分がホラー&ミステリ好きゆえに「絶対これが最適解!間違いない!」と誰でもあからさまにわかるほど期待値を高くするのもしらけるし……、という気持ちもあって、ぼかしつつ、ちりばめるヒントは多くするという形でちょっとメンテナンスした。


『つまさき奇談』は「動機」がネックだったりする。クローズドにつきものの、"脱出"という消極的動機が強く働くうえ、解決しなければというプレッシャーも人によっては薄めなので、あの環境でリスクを冒してまで探索しない、となってしまうことも十分ありうる。解決動機を持ってない立場(観光客とか)で、NPCとも関わりが薄いと終盤まで動機ほぼゼロだしな…。この辺、もう少し改善できそうな感覚はあるんだけども。


先日PLとして参加した『まれびと~』も、探索者にメタ思考ありきではなく自然な流れであの行動をとらせようと思うと、動機よりも期待の方を補完すればよさそう、と。自分がやってみた感想として、「これを試してみよう」と(PLでなく)PCが感じる要素がかなり少なかったので、そこが強ければ戸惑わなかったかな、という感じ。

以下、ネタバレになるので下げてます。














































個人的に、行動の逆風になってしまったなあと思うのは


★「あなたが祈る時は(略)」を再現することで助かるかもという期待感が、探索者の視点からみたときにかなり薄い。

 敬虔なクリスチャンで聖書の一節に対して絶大な信頼を置いている場合を除けば、「"報いてくださいます"とある、つまりこれが助かる手段である」というのは、ほぼメタ読みありきになってしまう。たとえば「このフレーズを心の支えにして、ここから逃げようともがいた人がいて、その人は何かをつかみかけていた」という因果関係を見せることで、探索者としての期待値がぐっと上がる気がする。


★既存の讃美歌をもじっている歌詞を「何か超常的なことが起きうる呪文」というより、狂人になってしまった者の認知のゆがみを表現した情報として受け取ってしまった。キリスト教系で即効力のある詠唱といえばこう、悪魔祓いのときに読み上げる系の聖書の文面を想像してしまって…でも冒涜的なナニの代表選手といえばキャロル、というのもわかるので、これは単にPLの持ってるイメージとたまたま合致しなかっただけかな。


★あの状況の解決手段として、詠唱が悪手(トラップ)なのではという「反・動機」の要素が結構強くあった。

 歌詞が冒涜的であると明言されSANCが入った経験から、これは「解決策としては悪手の、他の脱出方法が見つけられなかったときの最終手段」ということなのでは?かなり慎重になった気がする。この逆風をおして「いや、やっぱりこれを唱えるべきだ」と思わせることができないと「ゲーム上、クリア手段が他になさそうだから…これが通常ルートなのかな…」という、没入感のない判断に頼らざるを得ないことになる、と。


なので、このへんを解消するには…シナリオ作者さまの狙いからすれば「モロ出しすぎてダサい」のかもしれないけど、もう1フレーズ、彼女の遺した言葉が壁なり床なりに追加されていたらスムースな気がする。白文字(正気の絶望)→赤文字(狂気/呪文)の間の時間軸、なかば狂気に侵され、信仰を裏切ることを恐れつつも邪神の暴力に頼ってでもあれらを一掃する手段を編み出している最中の殴り書きとか。そういう前フリ情報があったら、半信半疑ではあっても「災害じみた力を回避できるあの洞窟で」「邪な神を頼るあの歌を」という期待が、メタ読みだけではなく探索者の視点からも出てきそう。


あ、「祈る」の前の、「人払いをし、扉を閉めて」という要素がすでに中央の祈りの家で達成されている(幕は降り、室内には自分たちだけ)のがちょっと気になった。最終のエンディング分岐にかかわるミスリード要素だと思うんだけど、それで洞窟に行く動機を弱めてしまうと、あえて洞窟にいく「動機」が完全にメタありき(脱出用じゃないとわかる船の天板がおあつらえ向きに入口に置いてある設定=あそこが選択肢として正解だな?)になってしまう気がする…。

ちなみに、人ひとりが技能判定なしで立てかけられる程度の天板の重量だと、人間がロストするような竜巻に襲われたら即ふっとんで入口開いてしまいそう…っていうのも…。入口を封じるのにそこそこのSTR/SIZ対抗(PC合計で再チャレンジ可)みたいな処理があると説得力というか納得感が増すかも。


とか、イチャモンつけてるみたいな内容になってしまったけど、舞台設定や演出はかなり好印象だったので、最終の展開を余計に惜しく感じてしまっただけですよっと。

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